さて、どうするかな。
目の前の状況。冷静な判断。シグリィは目を細めて、軽く唇を吊り上げる。
そのやけに落ち着いた態度に、見すえた相手は機嫌を悪くしたようだった。
「何を笑っている小僧。貴様にはもう勝機はない」
「さて……」
腕を組む。それは戦いの場に置いて、とても無防備になる姿勢だ。
案の定、それを見て敵は―人肉種最高位たる《人型》、当人いわくスイービーという名の存在は、腹を立てたように足元の土を蹴った。
「何を余裕をかましてやがる! 貴様を喰らうぐらい、簡単なことなんだぞ!」
「そうなのか」
「……このっ……」
「何をそんなに怒っているのかな」
「―――」
憤怒のあまりスイービーは顔を真っ赤にした。それにしても色白な《人型》になったものだ、と呑気にシグリィは考える。
白い肌に、たまったマグマのような怒りは明確に表れる。
シグリィは意に介せず、周囲を見渡した。
春の野原のはずだった。広い広い、柔らかな草が広がる大地のはずだった。
しかしそこにひとつふたつみっつと不自然なクレーターが出来上がり、土はえぐれて暗い茶色をさらけだしている。
クレーターの底に岩があるなと、どうでもいいことをシグリィは考えた。
「この、小僧……っ」
スイービーの両拳が固められ、ぶるぶると震えている。
シグリィはようやく視線を彼に戻し―言った。
「なぜ私がこんなに余裕なのかを知りたいかって?」
スイービーの罵声を聞き流しながら、少年は人差し指を立てた。
「ひとつ提案だ。私たちがお前を見つけてからの出来事を、リプレイしてみようじゃないか」
「……りぷれい?」
「もう一度くり返すことだ」
姿こそ人間と同じでも、元は人を喰らう獣、人肉種である。言語表現には乏しいのだ。
まず、とシグリィはどこか楽しそうにリプレイを開始する。
「私たちはイグレラの町で、人が毎日死ぬという話を聞いた。間違いなく人肉種だろうと判断した我々は、ターゲットがどのレベルかを計算」
スイービーはふんと鼻で息をして、偉そうに胸を張る。
「《人型》だとは思わなかっただろう」
「いいや。最初から《人型》だろうと算段はついていたさ。……理由は簡単だ、お前たち人肉種はレベルが上がれば上がるほど、喰い方がきれいになる」
そう語りながら、すっと目を細める。
人肉種。必ず、獣の形から生まれる存在。人を喰えば喰うほど人の姿に近づき、やがて人と同じ姿になる。
獣である頃の喰い方は、それはもう乱雑で、いかにもケダモノが喰ったという感じの残骸が残る。
そんな獣たちは育っていくにつれて美味い部分を覚え、やがて内臓しか食べなくなるのだ。
「《人型》だと判断した私たちは、ターゲットは町の中に紛れ込んでいるとふんだ。《人型》ならそうするからな。だから、セレンを囮に使うことを決めた」
リプレイだ。
再演。
どうせならば―忠実に再現しようじゃないか。
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