振り下ろした。
かわされた。不思議だった。地面にクレーターを作ることになど感慨はなかったが、少しは出来る戦士なのかと頭の隅で考えたような―ああ、考えた。そんなことも鮮明に思い出せる。
思い出せる、どころではない。目の前に―自分の攻撃をかわしたあの男の姿があるじゃないか。
混乱。頭の中が紛乱する。何だこれは、何だこれは何だこれは何だこれは――
かき乱される心のままに、爪を振りかざした。
剣で受け止められて、ぱきりと爪が折れて、痛みよりも激しい衝撃を受けた。全身に怒気が回って、この男を許せない、そう思って、
横薙ぎに爪を振るった。
「三撃目」
そして――どうなった?
再現された世界がスイービーの思考を惑乱させる。そうだ、ここで俺は男を仕留めた。爪は男の首に食い込んだ。爪にその感触が、
……感触が?
どこに……ある?
「そこで、セレンが杖を振るって」
高らかな女の声が耳に響いた。魅惑的で、そしてこれ以上なく攻撃的な。
爆発。何かが爆発した。そして俺の体に再びの衝撃。
俺はもう何も考えずに、女に向かって爪を振り下ろした。
「四撃目」
爪は土をえぐった。俺の体は前傾姿勢になった。攻撃の直後はとても無防備になることが――こうして再現されてようやく分かる。
背中、狙われたのは背中だ。
視界の端で、男が剣を軽い動作で振り下ろしたのが分かった。
その後は――
急に、霧が晴れた。
「さて」
少年はにこりと笑った。「リプレイ。自分がどうなったか、思い出せたか? スイービー」
「俺……は……」
背中から、
斬られて、
まっぷたつ? 誰が? 俺が? そんなバカな、――……
「思い出せ。お前の後ろに今誰がいる?」
少年の囁き声は、耳をかすめておぞましくスイービーの体を震え上がらせる。
後ろ、後ろにふたつの気配を感じた。ひとつはとてもとても美味しそうで、ひとつはとてもとても恐ろしい――
りぷれい。
再演。
たった数十秒の出来事。めまぐるしく起こったそれは、到底受け入れられるものではなかったから、
「さあスイービー」
少年の声は、甘く優しかった。
「もう眠れ。……現実はお前を否定した」
「―――!」
その瞬間に、愚かな《人型》は消え去った。
塵も残さずまるで誰もいなかったかのように―……
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