「シグリィ様」
カミルがスイービーに止めを刺した剣をおさめて駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか」
「ああ、何とか」
背中が焼けるように熱いのを感じて、シグリィは苦笑する。
背中の中央には玄武の《印》がある。現実を無視することのできる、使い方次第では最強の力。
「ヘンな《人型》でしたねー」
長い黒髪を背中に流しながら、セレンが歩いてきた。「死んでもなお現実に留まるなんて、初めて見たわ」
「それだけ強力だったんだ。……人肉種の糧は人間の心。想いそのものだからな」
スイービー、という存在は。
囮となったセレンについてきた先のこの野原で、カミルによって斬り裂かれた。
だが、スイービーという存在を成す“想い”が、この世に留まり続けたのだ。
――そんな現象を消し去るには、もう一度スイービーに現実を思い知らせる必要があった。
リプレイ。
そんな技は、シグリィでさえも滅多に使わないものだけれど。
「うまくいってよかった、というところか」
ふう、と吐息をひとつ
野原に穴あけちゃいましたね、とセレンがつぶやく。
「ああ……とりあえず穴は埋めていくか」
大地さえならしておけば、草々は強い。また芽吹くだろう。期待をこめてそう言った。
三人はそれぞれに動き出す。クレーターを埋めるために。
ふわり。春の柔らかい風は、想いを散らしたひとつの存在を乗せて、そのまま通り過ぎた。
≪終≫
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