――時々旅をしていることが怖くなる――
「ああ、ここは……」
と、最年少の少年が辺りを見渡してつぶやいているのが聞こえる。
「もうほとんどがアレの餌食になった後だったか」
「この様子だと、元から貧困の村だったのでは」
カミルが少年とは違う方向を眺めながら、目を細めていた。
「そうだな。……肉がついていない貧相な者ばかりになっていたから、見切りをつけたんだろう」
ああ。いやな言葉だ。
私は靴先で地面を蹴っ飛ばす。
乾き切った砂がわずかに飛んだ。硬い。石ばかり転がっている。
緑の気配がない。
水の気配もない。
見渡す限りの乾燥地帯。岩を高く積み上げて造った建物は、雨風をしのぐための屋根がない。
この地域に雨が降ることは非常に珍しいはずだ。じりじりと暑さが攻めてくるこの地では、風通しをよくする方が利口に決まっている。
はあ、と息を吐いて、太陽を見上げた。ときに憎らしい天の王者……
私は生まれてすぐに父とともに旅に出た。だから、今までかつて一度も、一所に長期間留まったことがない。
そんな私にも大陸はまだまだ広く、行ったことのない場所は多い。何しろ人生の半分は子供時代で、覚えていないことだってあるのだから。
それでも。
知っている。
世界には、こんな場所があることが。
とても人の住む所ではないのに、なぜか人は住居を造る。その理由を、私は知らない。
移動するような気力がないのかもしれない。そういう所に住む人々は、決まって少数民族だ。
あるいは、置いていかれた人々かもしれない。なんらかの理由で。
今この時代。人間の天敵、"人肉種"がはびこるこの時代。
少人数で住むことの危険性を、彼らは知っているのかいないのか――
「セレン? どうしました」
カミルが振り向いて、そう言った。
苦しいの。
そんな言葉は胸にしまって。
長くなった前髪をかきあげた。
「昨日倒した《人型》が、改めて憎らしくなってくる」
これも、あまりいい感情じゃないわね。自分で思って苦笑した。
カミルはいたわるような顔をしていた。正直な人だ。
「大丈夫よ」
微笑もうとしたそのときだった。
じゃり、と砂利を踏む音がして、私はばっと振り向いた。
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