「今、幸せ?」 - 2
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 骨と皮だけ――とは、まさにこのことだろうか。その少女は、五歳ほどのその少女は、崩れかけの建物の陰から、来訪者をうかがっていた。
 人間が残っていた――
 想像以上の安堵感があった。自分の顔がほころぶのが分かる。きっと優しい顔ができている。
 私はかがんだ。おいで、と呼んでみる。手を、差し伸べて。
 少女はぼんやりと、それを見つめていた。
 人差し指をくわえていた。よだれが、唇の端から流れている。
 ……食べ物をあげようか、どうしようか。
 貧困に苦しむ人々に、うかつに手を出してはいけないと言っていたのは誰だったか。
 ――それでも目の前の助けられるかもしれない命は助けたいじゃない!
「ご飯あげるわ、おいで?」
 私はにこりと微笑んだ。
「セレン」
 カミルが制止するように名を呼ぶけれど、無視を決め込んだ。主たる少年の方は、何も言わない。
「おいしいよ? いらっしゃい」
 何度も呼びかけた。
 ようやく少女は、唇を動かした。たどたどしく、紡がれる言葉、は、
「……ばけ、もの、の、なかま……?」
「―――」
 その瞬間、自分がどんな顔をしたかを、私は思い出せない。
 ただ、言葉という言葉すべてが、乾いた空気の中に封じ込められた。
 もう、自分にこの子に言える言葉はないのだと。悟った。自分が《人型》と同じ、人間という姿をしている以上は。
 差し伸べていた手が震えていた。慌てて引っ込めようとしても、麻痺したように動かない。
 少女はまだその手を見つめていて。
 次の瞬間に幼き声が届けてきた言葉を、きっと忘れない。
「……わたしの……ことも、たべて……くれる、の……?」
 引きつったに違いない私の前で、
 少女は逆に、かすかに微笑んだ。
「……わたしも……みんなとおなじにしてくれる……の……?」

 いつの間にか泣き出していた。
 セレン、と青年が呼んで、私を抱きかかえて起き上がらせた。
 彼の胸の中で泣いた。ただ、泣くしかなかった。
 少女の視線を背中に感じる。それは錯覚だったのだろうか。
 けれど彼女の目を覚えている。瞼に焼きついて離れないその目は、あまりにも穢れなさすぎて。
 主は一通りその場所の様子を見た後、苦渋の決断をした。
「残っているのはあと七人。みんな、同じことを願っているんだ」
 だから、それを叶えようと思う――
 そんな残酷なことってない。そんな残酷なことってないじゃない。
「彼らは人間と同じ姿をした怪物が人間を喰らうのを間近で見て、もう生きる気力をなくしている」
 そんな説明をされたって納得できない。たとえ押し付けと言われても、
 人間には無限の可能性があるって、信じたいじゃない。
 暴れる私を、カミルは力一杯抱きしめていた。

 ……少年が結局、どんな方法をとったかを、私は知らない。

 けれど、戻ってきた主は沈痛な面持ちでこう言った。
「最期の最期で……みんな、笑ったよ」
 もう涙を流すことさえ許されないかのような事実で――

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