骨と皮だけ――とは、まさにこのことだろうか。その少女は、五歳ほどのその少女は、崩れかけの建物の陰から、来訪者をうかがっていた。
人間が残っていた――
想像以上の安堵感があった。自分の顔がほころぶのが分かる。きっと優しい顔ができている。
私はかがんだ。おいで、と呼んでみる。手を、差し伸べて。
少女はぼんやりと、それを見つめていた。
人差し指をくわえていた。よだれが、唇の端から流れている。
……食べ物をあげようか、どうしようか。
貧困に苦しむ人々に、うかつに手を出してはいけないと言っていたのは誰だったか。
――それでも目の前の助けられるかもしれない命は助けたいじゃない!
「ご飯あげるわ、おいで?」
私はにこりと微笑んだ。
「セレン」
カミルが制止するように名を呼ぶけれど、無視を決め込んだ。主たる少年の方は、何も言わない。
「おいしいよ? いらっしゃい」
何度も呼びかけた。
ようやく少女は、唇を動かした。たどたどしく、紡がれる言葉、は、
「……ばけ、もの、の、なかま……?」
「―――」
その瞬間、自分がどんな顔をしたかを、私は思い出せない。
ただ、言葉という言葉すべてが、乾いた空気の中に封じ込められた。
もう、自分にこの子に言える言葉はないのだと。悟った。自分が《人型》と同じ、人間という姿をしている以上は。
差し伸べていた手が震えていた。慌てて引っ込めようとしても、麻痺したように動かない。
少女はまだその手を見つめていて。
次の瞬間に幼き声が届けてきた言葉を、きっと忘れない。
「……わたしの……ことも、たべて……くれる、の……?」
引きつったに違いない私の前で、
少女は逆に、かすかに微笑んだ。
「……わたしも……みんなとおなじにしてくれる……の……?」
いつの間にか泣き出していた。
セレン、と青年が呼んで、私を抱きかかえて起き上がらせた。
彼の胸の中で泣いた。ただ、泣くしかなかった。
少女の視線を背中に感じる。それは錯覚だったのだろうか。
けれど彼女の目を覚えている。瞼に焼きついて離れないその目は、あまりにも穢れなさすぎて。
主は一通りその場所の様子を見た後、苦渋の決断をした。
「残っているのはあと七人。みんな、同じことを願っているんだ」
だから、それを叶えようと思う――
そんな残酷なことってない。そんな残酷なことってないじゃない。
「彼らは人間と同じ姿をした怪物が人間を喰らうのを間近で見て、もう生きる気力をなくしている」
そんな説明をされたって納得できない。たとえ押し付けと言われても、
人間には無限の可能性があるって、信じたいじゃない。
暴れる私を、カミルは力一杯抱きしめていた。
……少年が結局、どんな方法をとったかを、私は知らない。
けれど、戻ってきた主は沈痛な面持ちでこう言った。
「最期の最期で……みんな、笑ったよ」
もう涙を流すことさえ許されないかのような事実で――
|