思ったとおりオレが案内された部屋から一番遠い位置にあった部屋のドアを蹴破ると、そこにはたったひとり、くそガキ――もといウルグだけがいた。お世辞にも大きいとは言えねえベッドにのんきに腰かけて。
「……うわっ、ロリコンのにーちゃんじゃん」
ウルグは戸口に立ったオレの姿を見て、へらっとしながらそんなことを言った。
「こういうのをゲキテキって言うの? 恋人が気になって扉蹴破ってくるなんて、にーちゃんも意外とムードに酔うタイプ?」
ちっとも減らねえ減らず口を無視して、オレはその部屋を見渡した。オレが案内された部屋よりもずっと……そう、ずっとしっかりしている(部屋だ。普通の宿の部屋だったらまず置いてないだろう、木彫り細工の玩具が散らかっている。ウルグが座っているベッドもシーツがしわくちゃ、つまりベッドメイクがされていない。小さなテーブルの上には、乱雑に置かれた食べかけのフルーツやらデザートやら。整理整頓されていないその部屋は、そのせいで却って生活感がある。
宿屋の一室っつーよりは、人間が住むための部屋と言ったほうが正しい気がした。いや――実際そのとおりなんだろう。
ここはウルグの私室に違いなかった。
その証拠かどうか、もうひとつ、決定的な他の部屋との違いがある。
――奥に、もうひとつの扉。
「んー? にーちゃんひょっとして怪我してない?」
ウルグがこちらの方向に首をつきだして、しげしげとオレを見ようとする。オレは肩をすくめる。
「……オレがここにいる。他に訊くことあるんじゃねえか? お前」
「それ言ったらにーちゃんのほうこそ!」
「………」
ウルグのどこか勝ち誇っているかのような表情が何だか癪に障るが、仕方がない。オレは手を腰に当てて、ため息とともに言った。
「あーはいはい。んじゃ一応訊くぞ――シャラはどこだ」
「うっわー気のない言い方! そんなじゃシャラ泣くぞ。いいのっかなー、女の子泣かすと後が怖いんだぞー」
「てめえ何歳だよ」
「そんなことジョーシキじゃん」
「……てめーをそーゆー風に教育した人間がいたらぜひとも説教しに行きたいところなんだが、それより」
オレは目を細めた。
「――“従”は死んだ」
ぴくり、とガキが反応した。その様子をつぶさにとらえながら、続ける。
「あの“従”の目的はなんだったんだろうな。たぶんオレの足止めだったろうと思うんだが……なまじオレの正体を知りたがったせいで、敵意を少し早く出しすぎたんだよ」
あそこで襲われてなきゃあ、オレだってシャラを放ってひとりで寝ようとしてたかもしれねーのにな。そこまで言ってやって、オレは唇の片端を軽く吊り上げた。
目の前の子供の、生意気な表情があっという間に消える。まさか、と小さく呟く声が聞こえた。
オレは戸口に軽く腕をかけ、
「信じるも信じねえも勝手だが、事実こうしてオレはここにいる」
さあ――、
「……どうする? ご主人様(」
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