男がゴミあさりをしていたわけは、宿屋の窓から大切な絵を落としてしまったからだった。 男はゴミ山の上に落としたと思い込んでいたらしい。じっさいには、男が2階から降りてくる間に風に飛ばされて、それをリンが拾ったわけだ。 騒ぎが収まりリンにそれを返してもらうと、中年男はそれを抱きしめて涙を流さんばかりに喜んだ。 「ああ良かった!これは俺の息子代わりなんだ……!」 どうやら彼は、仕事の関係でしばらく家族と離れているらしい。 それを聞いてしんみりした子供たち一同。 ――自分たちの親は、今頃どうしているのだろうと。 そう考えると、彼らには目の前の男を責められなかった。 レッカ、リン、セイラ、ルカ。それに一応バーラも含めて――みんなで、その一見落書きのような愛情の絵を囲み、親子の姿を想像して盛り上がってみる。 「これ、お子さんが描いてくれたんですね」 「オヤジさんの似顔絵か?似てないやん」 「セ、セイラちゃん……」 「いや」 男は、恥ずかしそうに言った。「それは俺が描いたんだ。子供をモデルに」 「………………」 そして―― (おれらしくないよ……絶対。なあ?) 床掃除をしながらレッカは、心の中でひたすら嘆いていた。 (ああきっと、やっぱり疲れてるんだ。もう少し寝ていれば良かった……どうせ朝飯作らなくていーんだし、ああもう、なんでこんなとこまできてこんな雑用――) 「床磨きが終わったら外の草むしりだよ!」 遠くから、宿屋のおばさんの声が飛んでくる。 現在彼は、小麦の弁償のために仕事を増やされていた。リンは小麦をかぶったために風呂に入っている――なぜかセイラも一緒に。 そしてバーラとルカはと言えば、 「おいらたち朝から働きどおしなんだ。ご飯先に食べてくるからね」 (仲間って……友情って……っ) レッカは血の涙を流したい気分だった。 床から目を上げると、少し離れたところであの男が窓磨きを無言でやっていた。 「ゴミあさりなんてぇバカなことをやるような男はね、しつけし直しだ!」 じっさい荒らされたゴミをまとめるのは大変だったのである。 ひたすら黙々と働く男の後姿に、今は深い同情を禁じえないレッカであった。 その後、けっきょく風呂上がりの女子陣、先にご飯を食べた男子陣ともにレッカの手伝いをしてはくれたのだが―― 数時間後。彼らは新天地に向かい、船の上にいた。 ――まっさきにレッカが船酔いを起こしたのは、ただ船に弱かったためだけでは、なかったかもしれない…… (終わり) |