其れは幼き心の傍らに―3−7
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 トリバーが立ち止まった。
 ふいに頬に冷たい雨の感触を覚えて、アリムは思わず大きく目を開いた。
 緑の髪の青年の顔が見えた。何かに驚いたかのように瞠目した顔が――やがてきつく唇を噛み。
「貴様ら……精霊を」
『あなたに対抗するには、これしかありませんので……マギサ・ニクテリス』
 トリバーの緑の髪が、雨に濡れる。
 急にアリムは悟った。青年がかけてくれた雨避けの術が切れた。そして彼は、術をやり直せずにいるのだ……!
『雨が降っているのが少々気がかりですが……』
 目を向けた先、マスカ・アネルが片手に掲げたもの。
 赤く赤く燃える――炎。
火精ピュールの力も最大限に発揮できませんね。ですがきっと充分でしょう、火精はあなたのもっとも苦手な力だ』
 ばかな、とトリバーが毒づいた。
「正気か? こいつも巻き込まれるぞ!」
 アリムをかばうように立つトリバーに、覆面の奥の目は妖しく微笑んだ。
『ご心配なく。彼は死なないていどにいたしますよ――ただし、あなたには過ぎた熱量でしょうね。大変申し訳ないがマギサ、あなたには消えていただきます――』
 声が、薄笑いに、変わった。

 少年たちの目の前で、
 炎が、一瞬にして通りをうめつくすほどに膨れ上がり、

「爆発、する――!?」

 そして、

 胸元で何かが、焼けるように熱くなった。

『炎は危険なもの――』
 脳裏に母の言葉がよみがえる。
『だから、火の精霊とは仲良くね……アリム』
 本当は、と母は言った。
 火だってとてもやさしいものよ――と。



 熱い。これは炎の熱さ?
 苦しい、助けて、

 さようなら、と誰かが囁く。





 そして――そして……?





 ああ、まただ。
 うずきを覚えた胸に、アリムはぎゅっと手を当てる。
 お願いだから、お願いだから、
 ぼくのそばからいなくならないで
 この熱い世界では涙が乾いてしまう
 悲しくても涙を流すことさえできないから、だから――





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