「ほい! お前は俺の隣なー」
強引に隣に座らされ、別の位置に置いたアリムの分の皿をわざわざこちらに移動させる。
「あ、あの、ちょっと……」
アリムは慌てた。――実を言うと、“隣に誰かいる”状態で食事を取ったことが、今までなかった。食事をするときはひとりきりか、母か伯母が――もしくはその二人が相手で、そうなれば自然とテーブルを囲むか、向かい合うか。
「隣同士に座るの、何か俺好きだから」
アークは訳の分からないことをのたまった。
「……おかげで俺はいつも強制的に席が決まるんだが……なぜお前は他人の迷惑を考えないんだ……」
傍にいたくもないのに、などとぼそりとトリバーがぼやいていたりもして。
伯母は向かい側に座って、楽しそうに笑う。
隣。
すぐ隣に、たしかな人の気配がする。
食事をする、そんな無防備な時間に、こんな近くに人がいる。
――母親以外の人間が。
「………」
暖炉がぽかぽかあたたかかった。
自分が淹れたばかりのお茶が、ゆらゆらと白い湯気を立てていた。
何だか、泣きたいくらい胸が熱くなった。
「ほらほらアリム、こんなうまいもん、ちゃんと食べないと人生ひとつ損するぞー」
どこまでもノリの軽い青年の、優しい手がいつの間にかアリムの肩に乗っている。
いたわるような……あたたかい手だった。
何かを、彼に言いたい気がする。
けれど、気持ちをうまく表現できる言葉が見つからなくて、アリムはもどかしい気持ちを抱えた。
手が止まってしまっている少年にアークがほれほれと強引に食べさせようとしたおかげで、ようやく我に返った。ぽそりぽそりと口に入れたいつもの伯母の料理が、いつも以上に美味しい。
何て……言えばいいんだろう。
食事が終わるまで悩み続けたアリムの肩を、食事が終わるなりアークはなぜか強く抱きしめて。
――お前の気配も、気持ちいいな。と言った。
目を閉じて、まるで夢を見ているかのような表情……
けれどその言葉の意味は、今のアリムには分かるはずもなく。
「そうしてると」
と、伯母が肩を寄せ合う二人を見て笑った。
「仲のよすぎる兄弟みたいだねえ、あんたたち」
「―――」
きょう……だい?
顔立ちも、髪の色や瞳の色も、体型も、まったく似ていないのに?
そう見える? と素直に嬉しそうな顔をしてくれる琥珀色の瞳。その横顔を見つめて、アリムはぽつりとつぶやいた。
「……兄弟……欲しかったな、ぼく……」
それを聞いて、アークがふとこちらを見た。
その瞳に何か言いたそうな光が見えた。
けれど、結局一言もアリムに言うことなく――青年は、「それじゃ、片付けお手伝いお手伝いーっと」と気楽な調子で立ち上がった。
暖炉の炎が、ぽうと揺れた。
|