【小鳥】
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〜2〜


「……起きなくてもよかったんだが」
 少しポカをしてしまった。カミルが敏感で当たり前なのだ。
「シグリィ様、よかった……目が覚めたのですね」
 カミルがほっと息をつく。
「ああ。まあ……」
 シグリィはただ隣の少女だけを気にしていた。
 少女はシグリィのほうを見て、
「目、覚めた……よかった、ね……」
 嬉しそうな表情をした。
「――ありがとう」
「ううん」
 シグリィ様、とカミルは小さな声で少女を示し、
「彼女は、リールーと言うそうです。隣のベッドですから、どうぞ仲良く」
「………」
 シグリィは眉根を寄せた。
 リールーはひたすら嬉しそうに、シグリィを見つめていた。
「お腹……お怪我したんだって、ね……。早く、治るといいね」
「ああ……」
 ――シグリィの体の弱さ。それは色々な要素が入り混じった原因だが、一番分かりやすく言えばこうなる。
 それは力の持ちすぎだからだ。
 そして、その力の中には「これ」も含まれる。
 すなわち、「感覚の強さ」――

 シグリィの「感覚」は、すでに感じ取ってしまっていた。
 ――リールーがなぜ、入院しているのかを。

「リールー。折り紙ですか」
 カミルが優しく話しかけた。
 折り紙という文化は、本来南大陸にあった。
 かつて東大陸が観光地であったころ、観光客が持ち込んで、今この東大陸でも当たり前に見られる。
「うん。折り紙……」
 貴重な紙が豊富に取れるこの東だからこそ、許される遊び。
 何を作っているのですか、とカミルは訊いた。
「小鳥さん……」
 リールーは小さな声で、嬉しそうにそう答えた。

     **********

「青い鳥さんが来るの」
 窓際のベッドのリールーは、いつも窓から空を見上げながらそう言った。
「青い鳥さんがね、私を迎えに来るの」
「迎えに……?」
 体を起こせないまま、毎日シグリィはリールーの口癖を聞き返していた。
「青い鳥の伝説なら聞いたことあるわ」
 見舞いにきたセレンが楽しそうに話をする。
「青い鳥って、幸福の証なのよね」
「うん」
 リールーは嬉しそうな顔でそれを肯定する。
「だからね、青い鳥さんがいつか私を迎えに来るの」
「そっかあ……それってリールーの病気が治るってことよね」
 前向きでいい子よリールー! とセレンはリールーを抱きしめてきゃーきゃーと騒ぐ。
「………」
 その様子を、シグリィは何とも言えない表情で見つめていた。
「シグリィ様?」
 病室に飾る花を変えていたカミルが、シグリィの表情に気づいて不思議そうに名を呼ぶ。
「いや……」
 カミル、とシグリィは連れを呼んだ。
「はい」
「セレンも。少し頼みがある」
「はい?」
 リールーを抱きしめていたセレンが、動きをとめて振り向いた。
「ねえねえ、何のお話?」
 リールーが指をくわえて聞きたそうにしていたが、
 シグリィは片目をつぶって、
「秘密だよ」
 と言った。

     **********

「ねえねえ、シグリィ」
「なんだい」
「カミルさんと、セレンさんは、どこへ行っちゃったの?」
 ――ここ数日、見舞いにさえ訪れなくなった二人の男女がどこへ行ったのかを、リールーはしきりに知りたがった。
 何と言っても、シグリィが「頼みがある」と言ったその日から、二人は病院に来なくなったのだから。
「ねえ、シグリィばっかり知っててずるいよう」
 リールーは相変わらずベッドを折り紙まみれにしながら、ぱたぱたと暴れた。
「………」
 シグリィはそっと微笑んで、「リールー」
「なあに?」
「その折り紙を一枚、私にもくれないか」